舞台はマナビジョン大陸っていう、異世界もんです。現代物じゃありません。

「う〜、あ〜、痛え〜」
 入学式終了直後にまさかの告白。そして、その所為で新学期早々遅刻して担任の内海麗奈に木刀で体罰を受けた春は、午前中で授業も終わり他の生徒達が帰宅の準備をしている中、机に頭を踞めて延々と自分の不調を訴えていた。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
 そんな春を心配してくれたのは、空色の髪と瞳をした春だった。いや、違う。傍目から見たらソックリなのだが、凝視して見ると目も春よりすこしパッチリしており、腰まで届く髪を適当に束ねている春とは違い、こちらはまるでそれが一番この髪の魅せ方だと錯覚さっせるかのように、何の装飾もなく―あると言ったらこめかみの部分に黄色いヘアピンをしているくらい―自然体のまま髪を踊らせている。更に良く見てみると、微かに胸に膨らみがあり、そしみ女子用の制服を着ている。それらの特徴が『彼女』と春を区別していた。
「うー、無理……。大丈夫じゃない。でも、空はやっぱり優しいな〜。このクラスで心配してくれるのは空だけだよ」
 まるで恋人と話すような甘い声だった。
 空の笑顔に癒された春は、思わず空に抱きつきたくなり…流石に公の場でそれはマズイだろうと自制を掛けた。何せ空は春の双子の妹なのだ。学校ではマズイ。でも、家ならコミュニケーションの一環として……何て思案していると、突然後ろから何か軽い物で殴られた。
「なに、ニヤニヤしてるのよ」
 優香だった。いかにも女の子らしく細心の注意を払われた髪を丁寧にこめかみ辺りで纏めている、春と空の産まれた時からの幼なじみだ。
「に、ニヤニヤなんか……してた?」
「そりゃもう。どーで、空ちゃんの事で妄想してたんでしょ?」
 図星だった。伊達にずっと一緒に、それも鈴達皐月家よりも長く一緒に過ごしてきた訳ではないと言うことだ。
 そんなに顔に出てたのかな、と再び思案を始めた春に優香はため息をついた。
「ハァ。あんたって本当に空ちゃんの事しか目がいかないわね。これじゃ、シスコンって呼ばれてもしょうがないわ」
「別に良いだろ。唯一、血の繋がった家族なんだからさ」