武芸部って、ぶっちゃけ春達を繋ぎ合わせる「縁」みたいなものであって、
ストーリー上ではあまり意味がないんですよね。

「…で、一体何の用だよ?」
 これ以上ハヤトの言葉を聞くと頭が痛くなる事を知っている春は、会話を別の方向に持っていこうとハヤトと椿が自分達を呼びに来た理由を尋ねた。
「ん、ああ。藍ちゃんのメッセンジャーさ。今日は『武芸部』での活動は無しなんだとさ。という事で早く帰ろうぜ!」
 成る程、だからヤンキーが何も言ってこなかったのか。と春は納得した。
 このガーデンには、茶道部や野球部などと言った普通の部活に加え『武芸部』『武術部』の二つの部活がある。二つの部活にこれと言った違いはなく、どちらも年に一度行なわれる『ガーデン対抗武術大会』と呼ばれる、武術版甲子園みたいな大会の参加資格を持つ部活である。そしてハヤトが口にした『武芸部』には春、空、ハヤト、椿、優香、そして藍という少女と、これも春達と長い付き合いを持つのだが、あと二人の総計八人が所属している。それに引き替え『武道部』の部員は総計七十人とかなりの数を誇っている。同じ様な部活なのにこの違いは何なのか。それは春が思いあたる限りでも二つあった。
 まず、一つは『武芸部』の顧問が内海麗奈であること。麗奈は実力も指導力も確かなのだが、やはり噂の力は凄く、自分から進んで彼女の指導を受けようとする人間はあまり居ない。
 そしてもう一つは目標が違う事だ。『武道部』の目標は勿論武術大会の優勝。だが、『武芸部』の目標は武術大会の優勝でも何でもなく、ただ武術を楽しむという大学のサークルみたいな部活なのだ。どうせ入るのなら、武術大会の優勝を目指したい…そんな当たり前のプライドを持つ者が多い―『ガーデン』には特に多い―ので、麗奈の存在もあり結果的にこんな形になってしまったのだ。
 また、実は他のガーデンでは『武芸部』という存在はない、というよりも『武術部』自体区分されていない為、春達が一年生の時に『武芸部』は廃部寸前まで追い込まれたのだが、先程も述べた春達『武芸部』メンバーの尽力の末、こともあろうか武術大会に優勝してしまい廃部を間逃れたという経歴を持っている少し特殊な部活、それが『武芸部』だ。例え顧問の先生が恐くても、春達が入るまで一人で『武芸部』を支えようと努力し、春達を誘ってくれたのが如月藍。春は『武芸部』のキャプテンとしてひたむきに頑張る彼女の姿を格好良いと思っていた。
 そんな彼女が特別な理由もなく練習を休みにするなどという事は今までになく、何かあったのかなと考えてみるも、優香達が春を呼ぶので考えるのを辞めるように首を振り早足で優香達の背中を追いかけた。
(でも、本当に何があったんだろ?)