小説:僕の日記とは?
「そよ風とともに」に登場するキャラクターの一人、青崎春が主人公の小説です。
時系列的には「そよ風とともに」の一年前です。実は「そよ風とともに」と同じくリメイクしており、
微妙に「そよ風とともに」の春とは設定が違うのですが……そこはご愛敬。
ここでは、ちょっとずつストーリーを書いていけば、日記のネタにもなるし
小説も進むしの一石二鳥じゃね? の考えの元、小説を載せちゃいます。本当にちょっとずつ。
始めの方は既に公開してあるのを載せますが、決して書くのがめんどうくさいからではありません。

●プロローグ●


 季節は四月。先月、三年生が卒業したことにより、少しだけ寂しくなったこの学校に再び賑わいが訪れようとしていた。
 そう、今日からこの学校に新入生が入ってくるのだ。体験入学で学校を下見しているとはいえ、小学校からあがってきたばかりの子供達は身体を強ばらせていた。
 教師が入学生の名前を呼び、それに応えるように慣れた動作で、しかしやはり緊張しながら起立する。
 その様子を見た親は手に持ったビデオのレンズに子供を映しながら、笑い、または心の中で叱咤し、それでも微笑ましく見守っていた。
 新しい仲間を歓迎するのは、彼らの先輩達。即ち、今日から二年生と三年生になった生徒達だ。
 特に彼らの代表である生徒会は、春休みの終了二日前から入学式の準備をしてきた為、より一層入学生を歓迎する気持ちに溢れていた。
 そんな生徒達の中に、一人だけ夢の世界へ旅立っている者が居た。
 そこに居る人物は誰の目から見ても『美少女』であった。腰まで届く透き通るような黒髪。今は目こそ閉じているが、ひとたび目を開けば、そこには吸い込まれそうなほど黒い瞳が光を浴びる。
「うーん……う、わ…スゴっ……うへへ、宝くじに当たっちゃったよ……」
 その『美少女』はもごもごと、近くに居る生徒達が聞き耳を立てれば何とか聞き取れる程度の小声で、寝言を呟いた。
(ねえ、春…ちょっと起きなさいよ)
 右耳より少し上の位置に、丁重に管理された髪を綺麗に纏めている少女は、入学式だというのに、そんなの自分には関係ないと言わんばかりの勢いで眠る、春と呼ばれた『美少女』の背中を、これまた近くの生徒が耳を澄まないと聞こえないほど小さな声で背中をさすった。
「うわぁ…そ、空、駄目だ……そんな格好で…ああ、でも可愛い……な〜」
 そんな少女の親切心を余所に、春はやはり呑気に寝ていた。
(起きろっつってんでしょうが―――!!)
 自分を無視された少女…姫野優香は遂に―実は、かれこれ一〇分も前から春を起こそうとしていた―堪忍袋の尾が切れ、入学式を邪魔しないギリギリの声で叫びながら春の背中を抓った。
「痛っ――――むぐぐぐぅ!」
 優香の怒りの籠もった抓りを受けた春は、悲鳴をあげようとし、しかし周りの生徒に口を塞がれ、何とも言えない状態で覚醒した。


 校長がステージの上で新入生へ歓迎の言葉を贈っていた。